2009年11月29日日曜日
休暇願、報告書
2009年10月8日木曜日
2009年8月17日月曜日
すぐ使える文章の技術
レベル2 読みやすい文章を書く
レベル3 文章の価値を高める
編集部のノウハウを一挙公開読みやすさを高めるチェックポイント20
コピーするなどして,執筆・推敲時に活用して欲しい
「どうしてスラスラと読める文章を書けないのだろう」,「これで正確に伝わるだろうか」,「もっと分かりやすくできると思うのだが」——。
主題や構成をしっかり決めたとしても,実際に文章を書く段階になれば,悩みは尽きない。
実は表現に多少の手を加えるだけで,文章の正確さと分かりやすさは大きく向上する。そのためには,手を加えるべき箇所を見つけるチェックポイントを押さえておくことが肝要だ。闇雲に文章をチェックしても,どこをどう直すべきかが分からないことが多いからだ。
ここでは当編集部が培ってきたノウハウを基に,ビジネス文書の執筆・推敲時に役立つチェックポイントを紹介する。20項目を厳選して,簡単かつ優先度の高いものから,「正確な日本語を書く」,「無駄をそぎ落として読みやすくする」,「文章の価値を高める」という,3段階のレベルに整理した(図1[拡大表示])。
いずれも文章を読みやすくするための「表現」に関するチェックポイントだが,「内容」を充実させることにもつながる。ITエンジニアである読者には容易に推察できるはずだが,読みやすいソースコードほど,バグや不適切なロジックを発見しやすい。それと同じで,文章を読みやすくすると“論拠の乏しさ”や“論理的でない論旨展開”など「内容」に関する問題点が浮かび上がるからだ。
そして,この「内容」に関する問題点を修正するために文章を書き直す。すると,また「表現」に関する問題点が生まれる。そうして「表現」と「内容」に関する問題点の修正を繰り返すことで,文章の価値が高まっていく。これが推敲を「重ねる」という意味である。
以降で,20項目のチェックポイントを見て行くことにしよう。
文法的に正しい日本語を書くこと。これは,文章を書く上での大前提である。
「日本語として正しいかどうかなんて,いくら何でもチェックポイントとして当たり前すぎる」と思うのではないか。しかし意味は分かる文章でも,日本語として不適切な表現が見つかるケースは,決して少なくない。
まずチェックして欲しいのが,主語と述語の対応関係である(チェックポイント(1))。主語と述語(複数の単語から成り立つ場合は“主部”および“述部”とも言うが,ここでは主語と述語で統一する)は,文における最も基本的な構成要素だ。主語と述語の対応が正確に取れていないと,文として成立しない。
図2[拡大表示]に示した「プロジェクト・マネジャーの役割は,納期やコストを管理する」という文は,あるITエンジニアが実際に書いたものだ。この文の主語は「役割は」,述語は「管理する」である。「役割は…管理する」という対応関係は明らかにおかしい。正しくは「役割は…管理することだ」である。もしくは「プロジェクト・マネジャーは…管理する」とすべきだ。推敲を怠ると,このレベルの間違いが容易に起こり得る。
もう1つ例を挙げよう。
新しい業務プロセスは,各支店の購買担当者が仕入れ発注を行う。
意味は分かるが,ギクシャクした感じがしないだろうか。この文の問題点は,「新しい業務プロセス」が一見,主語に見えてしまうことである。これが主語だとすると,述語に当たる部分が存在しない。この文の本当の主語は「購買担当者」である。「新しい業務プロセス」が主語に見えてはいけない。そこで「新しい業務プロセス」に続く助詞の「は」を「では」に変えることによって,主語と述語の対応関係を明確にする。
「正しい対応関係を守る」という意味では,特定の言葉で受けなければならない接続詞や副詞の使い方にも注意しよう(チェックポイント(2))。例えば,「なぜなら」は必ず「からだ(からである)」で受けなければならない。「なぜなら,メリットが大きい」という文は間違いだ。「なぜなら,メリットが大きいからだ」にすべきである(ただし,「なぜなら」は省略できる場合が多い)。他の例として,「全然~ない」や「決して~ない」,「必ずしも~ない」,「なぜ~か」,「一体~か」,「もし~なら」なども挙げられる。プロのライターでも意外と見落としがちなポイントなので,気をつけて欲しい。
係り受けが正しいか
修飾語と被修飾語の係り受けに関する間違いも多い(チェックポイント(3))。その例が図3[拡大表示]に示した文である。書き手は「不備がある修正機能を改良する」という内容を伝えようとした。しかし「不備がある登録情報の修正機能を改良する」という文では,「不備がある」が「登録情報」に係っているように見える。この場合は,「不備がある」の後ろに読点(,)を打って,「登録情報の修正機能」がひとまとまりであることを示す。
文章の途中で,用語を変えてしまうこともよくある間違いだ(チェックポイント(4))。例えば文章の冒頭では「入力」と表現しているのに,途中から「登録」や「エントリー」に変えてしまっているようなケースである。
表現にバリエーションを持たせたつもりかもしれないが,文章を分かりにくくするだけだ。読み手は違う用語が出てくる度に,「なぜここで表現が変わったのか,違うことを指しているのだろうか」と考えてしまう。同じ意味を持つ用語は,必ず統一すべきである。
時制の間違いにも注意しよう(チェックポイント(5))。当たり前のように聞こえるかもしれないが,過去の出来事を現在形で書いてはいけない。
例えば,次のような文がある。
従来の問題は,在庫が過剰なことである。これを解決した。
「在庫が過剰なこと」は過去の話だ。そのため語尾を「である」から「だった」に変えなければ情報を正確に伝えていないし,後ろの「解決した」と時制が一致しない。
紀行文やルポルタージュなどでは,過去の出来事をあえて現在形で表現することがある。これは臨場感を持たせたり,文章のリズムを整えたりするためだ。だがビジネス文書では,正確さと分かりやすさを優先すべきである。過去,現在,未来の表現は,出来事が発生した(する)時点に合うように,正しく使い分けよう。
チェックポイントには載せなかったが,誤字や脱字,慣用句の用法に関する間違いも頻繁に起こる。ワープロソフトや,かな漢字変換ソフトの校正機能を活用したり,辞書を引いたりして,それらのミスを防ぐようにすべきである。
日本語としては正しいが,言い回しや言葉遣いが冗長なため,スムーズに読み進められない文章がある。どうしたら「流れるように読み進められる文章」を書けるのだろうか。
それを実現するために必要なチェックポイントは数多く存在する。ここではその中から,基本的なものを選び出して紹介する(前編の図1のLevel2)。
1つの文が長くないか
まず1つの文章をできるだけ短くしよう(チェックポイント(6))。
「プロジェクト・マネジャーが計画の作成や進ちょく管理,ボトルネックの分析といった業務に利用するプロジェクトマネジメント・ツールは,一昔前までITベンダーの間で導入が進まなかった」(図4[拡大表示]左)という文がある。これを読んで,すぐに意味が分かるだろうか。
この文の骨格となる主語と述語は,「プロジェクトマネジメント・ツールは」と「あまり利用されなかった」である。だが「プロジェクトマネジメント・ツール」にかかる修飾語の中にも主語・述語の関係があるため,文の構造が分かりにくい。
このように,主従関係にある複数の主語・述語の組み合わせを含む1つの文を「複文」と言う。複文は2つ以上の文に分けると読みやすくなる。図4左の悪文と右の2つに分けた文を見比べれば,読みやすさに大きな違いがあることが分かるだろう。
文が短いほど,読み手は意味をつかみやすい。執筆・推敲の際は,「この文を2つに分けることはできないだろうか」,「この形容詞や副詞は削れないだろうか」といった具合に,できる限り短い文にすることを心がけるべきだ。
分かりやすい語順か
図5[拡大表示]の左にある,「SCMシステムを取引先とともに商品在庫量を削減するため導入する」という文を見て欲しい。「こんな分かりにくい語順には普通しない」と思うかも知れない。しかし思いつくままに文章を書いていると,ついこういう語順にしてしまいがちである(チェックポイント(7))。
それには理由がある。私たちは文を書くとき,無意識のうちに,強調したい語句から並べていく傾向があるのだ。図5左の文の場合,書き手にとって最も強調したい語句は「SCMシステム」。次が「取引先とともに」,「商品在庫量を削減するため」だった。強調したい順にそのまま頭から並べていったら,こうなったというわけだ。
日本語では,様々な語順で文を書ける。そのため書き手はあまり語順を意識することがない。しかし語順は,文の分かりやすさを大きく左右する。「主語と述語を近づける」,「目的語(~を)を述語(~する)のすぐ前に配置する」,「長い修飾語は短い修飾語の前に配置する」といった原則をふまえ,一番分かりやすくなる語順を探そう。
図5左の文は,原則に従って「商品在庫量を削減するため,取引先とともにSCMシステムを導入する」と直すと,ぐっと分かりやすくなる。
専門用語に説明があるか
専門的なIT用語を何の説明もなく使うべきではない(チェックポイント(8))。そうした用語を使う際には,読み手の知識レベルを想定した上で,説明を加えたり,場合によっては平易な言葉に置き換えたりすることが必要だ。例えば,単に「CMMIでは5段階のレベルが決まっている」と書くのではなく,「ソフトウエア開発組織の実力を評価する基準であるCMMIでは…」という具合に説明を加える(図6[拡大表示])。
日ごろから曖昧なイメージのままでIT用語を使っていると,文章を書くときに明快な説明を入れるのは難しい。文章には書き手の知識レベルが表れることを,肝に銘じておこう。
専門的なIT用語だけでなく,特定の企業や組織内だけで通用する用語も,説明なしに使うべきではない(チェックポイント(9))。ITエンジニアの文章には,ソフトウエアやハードウエアの製品名,企業の社内システムの名称などを,何の説明もなく使っているケースがよくある。社内文書ならまだしも,外部の人に向けて文章を書く場合は,「読み手はその製品やシステムを知らない」ことを前提にするべきである。
二重否定になっていないか
「しかし」や「だが」といった逆接の接続詞を,短い文章で繰り返して使っていないだろうか(チェックポイント(10))。
例えば,次のような文章である。「この画面構成はおおむね顧客のニーズを満たしている。しかし改善の余地がある。だが納期が迫っているため,このままでよいと考える」(図7[拡大表示]左)。このように「しかし」や「だが」を連続して使うと,たとえ結論を明記していても,読み手にすっきりと伝わらない。見方を変えれば,逆接の接続詞を減らすことが,論旨展開の整理につながる。図7右にその例を示したので,参照して欲しい。
同様に,二重否定も文の意味を分かりにくくする(チェックポイント(11))。二重否定とは,否定した内容をさらに否定することである。例を挙げてみよう。
IT投資の費用対効果について,興味を持たない経営者はいない。
この程度なら決して分かりにくいとは言えないが,回りくどい感じが残る。これを肯定文に直すと,
経営者は誰でも,IT投資の費用対効果について興味を持つ。
となる。このように二重否定の文は,肯定文に直したほうが意味をつかみやすい(ただし意図的にテクニックとして二重否定にする場合は別)。
受身形は極力使わない
チェックポイント(12)は,代名詞が指し示す内容を明確にするというもの。「これ」や「それ」といった代名詞が何を指しているかが明確でないと,読みにくくなる上に,読み手に間違った解釈をさせる可能性がある。代名詞が何を指し示しているかが分かりにくいと思ったら,具体的な内容に置き換える。「そうした」や「こうした」という言葉も同様だ。
誤解を防ぐという意味では,受身形を極力使わないようにすることも大切である(チェックポイント(13))。文章を書き慣れていない人は,受身形を多用してしまう。しかし受身形を使うと,動作の主体があいまいになってしまう。しかも,リズムが悪くなって読みにくさの原因にもなる。例えば「Select文を入力すると,データが検索される」という文は,「Select文を入力すると,データを検索できる」という文にするべきである。
同じ語尾を繰り返していないか
テンポよく文章を読んでもらうためには,語尾に変化をもたせるとよい(チェックポイント(14))。
次の文を読んで欲しい。「電子入札とは,インターネットを使って公共事業の入札を行うことだ。最大の目的はコストの削減だ。公共工事全体に適用すれば,年間2000億円以上のコスト削減になる見通しだ」(図8[拡大表示])。語尾で「~だ」を繰り返しているため,文章のリズムが悪く,ぎこちない印象を受ける。
解消法は簡単である。「だ・である調」ならば,「~だ。~である。~だ。」のように同じ語尾が連続しないようにする(図8)。
このチェックポイントについては,執筆段階であまり神経質になる必要はない。あとで文を削ったり,新たな文を挿入したりすれば,同じ語尾の繰り返しが発生することがあるからだ。推敲時に,最後の仕上げとして直すようにしよう。
1つの文に同じ言葉が繰り返し登場することも,テンポを悪くする原因になる(チェックポイント(15))。例えば「データ分析システムを導入する際には,データ分析システムを使う目的を明確にする必要がある」という文章だ。この文では,後にでてくる「データ分析システム」を「それ」に置き換えるか,「データ分析システムを使う」を取り去る。
助詞の「の」を3つ以上つなげることも,読みにくさにつながる(チェックポイント(16))。「ERPの導入の問題の概要」のように「の」をつなげた言葉は係り受けが曖昧になるため,すぐには意味を取りづらい。連続して使う「の」は,多くても2つまでにとどめるべきである。
レベル3では,「文章の価値を高める」ためのチェックポイントをまとめた。読み手の興味を引きつけるような表現にしたり,信ぴょう性や説得力を高めるデータや事例などを盛り込んだりすることだ。これまでに挙げたチェックポイントとは違って単純に修正できるものばかりではないが,ぜひ実践して欲しい。
途中で疑問形の文章を入れる
まず途中で疑問形の文章を入れて,読み手の興味を引きつけるという表現方法がある(チェックポイント(17))。
ビジネス文書のように,何かを説明する文章では,どうしても表現が単調になりがちだ。「次に○○について述べる」のような繰り返しでは,読み手が途中で飽きてしまう。
そんなとき,疑問形の文章をはさみ込むという手が有効である。典型的なのは,問題点や課題を挙げた上で「では,どうしたらよいだろうか」や「原因は一体なんだろうか」のようにつなげることだ。「次に解決策を述べる」や「原因を挙げる」と書くよりも,メリハリが出て,読み手の興味を引きつけられる。これは講演者が聴衆に質問して,興味を引きつけるのと似たやり方である。
ほかにも「こんな疑問が沸いてこないだろうか」や,「ここできっとこう思うはずだ」のように,読み手の思考を誘導するような書き方も効果的だ。
具体的に解説する
説明の具体性を高めるためには,できるだけ事例やエピソードなどを盛り込むようにしよう(チェックポイント(18))。ITを使ったマネジメント手法やソリューションなど,ITエンジニアが文章を使って説明する事柄の多くは,人によって解釈が異なる抽象的な内容であることが多い。それだけに,できる限り具体的な説明を加えることが重要だ。
CRMシステムを説明する場合を例にとってみよう。単に「顧客情報を収集して管理し,最適な対応を実現する」と書くのでは,読み手が具体的なイメージをつかめない。そこで「小学生の子供を持つ顧客に絞り込んで,学資保険のダイレクトメールを送れる」のように事例を挙げて説明するとよい(図9[拡大表示])。
具体性が必要なのは,主張の論拠を示すときも同じ。論拠の裏付けとなる具体的な材料を示すことが肝要である。できるだけ数字やデータを盛り込んで,説得力や信ぴょう性を高めて欲しい(チェックポイント(19))。
SCMシステムの導入効果を示すには,「市場動向への迅速な対応」や「大幅な在庫削減」のように抽象的な表現では不十分である。「週次での生産計画の見直し」,「平均在庫量を20%削減」のように,できる限り具体的に表現することで説得力が高まる。
また単なる事実の羅列にとどめず,意義や理由を説明することも重要だ(チェックポイント(20))。例えば製品を説明する文章を書く場合,単に機能を羅列するだけでは不十分である。「その機能をどう実現しているのか」という仕組みを少しでも盛り込むと,読み手にとって理解しやすくなるし,印象にも残りやすくなるはずだ。
2009年8月13日木曜日
10年後も通用する文章術
私は企業のIT企画部門の課長としてチームメンバーの文章をチェックしています。また,教育コンサルタントとしてビジネス文章を教えたり,国家試験科目の論文添削をしています。
異なる立場で非常に多くの文章を見てきたので,今では「どんな文章が駄目なのか」がよく分かるようになりました。ここから紹介するのは「よい文章を書く技術」です。
「よい文章」とは「駄目でない文章」
私は人に「よい文章を書くコツは何ですか?」とよく聞かれます。そのときにはいつも,「駄目な文章を書かないようにすることです」と答えています。
人が何をもって「よい文章だ」と感じるかどうかは,極めて主観的なものだと考えています。個人の受け止め方や感じ方に依存する部分が多いからです。
では,ビジネス文書でも「よい文章」を書かなくてはいけないのでしょうか。もちろん,それができるに越したことはありません。
しかし,どんな人でも「うまい」と言わせるような文章を書けるようになるには,相当な訓練が必要で時間がかかります。普段忙しいビジネスパーソンに,なかなかその余裕は作れません。
少なくとも「駄目な文章」と思われなければ,ビジネス文章としてはとりあえず十分――。私はこう考えています。
そこでこの連載では,「誰が見ても下手で駄目」という文章を書かないこと=よい文章を書ける,と定義し,その技術を紹介していきます。これは,私が会社員として20年,教育コンサルタントとして10年活動して体得してきた超実践的な技術セットです。
駄目な文章は「どこが駄目」か
駄目な文章を書かないようにするにはまず,何が駄目かを理解しなければなりません。まずは駄目な文章を見ていくことにしましょう。
普段,私が文章をチェックして指摘しているのは以下の9つの項目です。これらを指摘されないようにすれば,とりあえず文章で「駄目」と言われることはなくなると思います。
(2)理由を書いて!
(3)(構造化の)階層をそろえて書いて!
(4)概要と詳細に分けて書いて!
(5)一言で表現して!
(6)抽象的な表現でなく,具体的に言って!
(7)省略をしないで書いて!
(8)事実と意見は分けて書いて!
(9)論点を明確にして!
(1)主張を書いて!
他人を説得するにはまず,主張がないといけません。「何をするのか,したいのか」をハッキリと明確に書きましょう。
(2)理由を書いて!
主張に説得力がないのは,理由が弱いからです。
「なぜ,それがよいのか」
「それがよいといえる背景」
「問題はなぜ,起こっているのか」
このように「なに」「なぜ」に対応できる理由を書くことが欠かせません。
(3)(構造化の)階層をそろえて書いて!
文章は構造を持ちます。たとえば「原因と結果」「問題と背景」「理由と主張」などは,それぞれ関係があります。
そして,文書構造の要素には,グループや階層(レイヤー)があり,これがそろっている必要があります。原因がない結果,結果だけで原因がないような構造はバランスが非常に悪いものになります。
(4)概要と詳細に分けて書いて!
いきなりテーマに関する中身を詳細に書いてある文章が出てくると,読み手は短時間で全体を理解することができません。
まず概要を書いて,内容を大まかに理解をさせてから詳細な説明に進むような工夫が必要です。
(5)一言で表現して!
時間がないときに長い文章を読まなければならなくなると,その人は不機嫌になります。一言で書くことはとても重要です。
(6)抽象的な表現でなく,具体的に言って!
説明が抽象的でイメージがわかない文書は分かりにくくなります。分かりやすく具体的に書くことが必要です。
(7)省略をしないで書いて!
ここでの省略とは論理学上の言葉で,「自分が知っていることを書かない」ことをいいます。
自分がよく知っていることを他人がよく知っているとは限りません。相手の持つ知識量や前提経験に照らし合わせて,「省略する,しない」を判断することが重要です。
(8)事実と意見は分けて書いて!
事実と意見を一緒に書かれると,どう判断してよいか困ります。
「3丁目で事故があった。人が大けがをした。渋滞で救急車の到着が遅れてしまい,意識不明のようです」
こう書かれると,どこが事実で,どこが推測か,うわさかが分かりません。事実は事実,意見(推論や推量)は意見として書くことが必要です。
(9)論点を明確にして!
テーマがぼやけると相手は理解ができません。何をするための文章なのかテーマを絞りましょう。
よい文章を書くための「6力」
ここまで説明した「駄目な文章を書かない=よい文章を書くため」の方法として,私は以下の6力を定義し,OJTやセミナーで教えています。
(2)納得させる~論理的記述力
(3)一目で認知させる~構造化力
(4)理解しやすくする~平易表現力
(5)正確に伝える~正確表現力
(6)少ない文章量で伝える~短文表現力
基本的にこの6力を体得すれば日常業務で文章に困ることはなくなると思います。次回は,駄目な文章を書かないための具体的な「6力」について説明します。
前回は,駄目な文章の要素を説明しました。よい文章の定義は難しいですが,誰が見ても駄目な文章の定義は比較的簡単です。
そこで前回の最後では,「駄目な文章を書かない」ための「6力」,すなわち6つの力を説明しました。
(2)納得させる~論理的記述力
(3)一目で認知させる~構造化力
(4)理解しやすくする~平易表現力
(5)正確に伝える~正確表現力
(6)少ない文章量で伝える~短文表現力
今回と次回で,これら6つの力について具体的に説明していきましょう。
(1)確実に伝える~論点絞り力
・「一番言いたいこと」を1つに絞り,その理由,詳細,具体策と展開する
・関係のない話や,無駄な話は排除する
相手に伝えるために必要なのは,「言いたいことを絞る」ことです。関係しそうなことを思いつきで書いていく。こうした論点を絞らない文章は分かりにくく,説得力が低くなります。
まず,論点を絞り,その論点に沿って,
「何を言っているのか」
「なぜそうなのか」
「具体的にはどういうことか」
「詳細に言うとどうなのか」
が明確にして書かなくてはなりません。たとえば,
システムパッケージの導入について 開発2部 山田
・パッケージを数社評価してみましたが,どのパッケージも機能が少なく,当社の業務にそう簡単にはフィットしそうにありません。
・カスタマイズが多くなると思われますので,どうにかすべきです。
・また,パッケージの中には,パラメータ設定が弱いものがあり,これへの対策も必要です。
・なお,外部コンサルタントに確認したところ,パッケージを導入する場合は,ベンダーのSEの動員力というベンダーのパワーがポイントになるということです。
・カスタマイズの件,お願いします。
以上
この文章は論点が不明確です。
「カスタマイズが多くなると思われますので,どうにかすべきです。」
「カスタマイズの件,お願いします。」
という2つの記述から,カスタマイズを少なくなるための方策を
(1)IT企画課長に相談したい
(2)IT企画課長に考えてほしい
のどちらかだと読むことができそうですが,それにしても内容が曖昧です。
また,「パラメータの設定」や「ベンダーのパワー」の話が出ていますが,中途半端な書き方なので,論点がぼやけています。
この文書は,以下のように直すべきでしょう。
システムパッケージのカスタマイズ減少策検討依頼 開発2部 山田
・パッケージを数社評価してみましたが,どのパッケージも機能が少なく,当社の業務にそう簡単にはフィットしそうにありません。
・カスタマイズが多くなると思われますので,IT企画課でカスタマイズ減少策の検討をお願いいたします。
・資料,評価項目は,当方より提示いたします。
以上
まず,タイトルを変えて論点を明確にし,依頼事項を明確にして論点を絞ります。
このように「言いたいことは何か」を明確にし,論点を設定し,論点に沿った文章を書くことが必要です。
(2)納得させる~論理的記述力
・「主張」したら根拠(理由)を書く
・根拠は,事実に基づく納得感のあるものにする
・根拠のない主張は絶対にしない
説得力のある「よい文章」は「主張」が明確で,その主張に納得できる根拠(理由)が明記されているものです。言いっぱなしで,根拠が伴わない主張しかない文章は説得力が低くなります。
根拠(理由)は明確で納得できるものでなくてはなりません。このためには,事実に基づいた根拠を利用します。事実は否定しようがなく,読み手に強い納得感をもたらします。
このように「主張と根拠の関係とは何か」を理解し,主張と根拠がしっかりした文章を書くことが必要です。
(3)一目で認知させる~構造化力
・「同じグループ」のことをまとめてタイトリングしたり,「同じ階層(レイヤー)のことをレベルをあわせて書く
・文章の性質(主張,理由,概要,詳細,論拠となる事実など)に合わせて,バランスのとれた構造を作る
説得力のある「よい文章」がもつ構造上の美しさ,分かりやすさを実現するのが,文章の構造化です。
同じグループのことをまとめてタイトリングして書いたり,同じ階層(レイヤー)のことをレベルを合わせて書き,構造化されたバランスのとれた分かりやすい文章を書くことが必要です。
次回も6力の続きを説明します。
<お知らせ>筆者の「文章力の本」が2月20日に発刊されました。タイトルは,「エンジニアのための文章術再入門講座」です。本連載「10年後も通用する文章術」と連動していますので,よろしければ読んでみてください。
◎平易に,正確に,短く表現する
前回に続いて,「駄目な文章を書かない」ための「6力」を説明しましょう。6力とは
(2)納得させる~論理的記述力
(3)一目で認知させる~構造化力
(4)理解しやすくする~平易表現力
(5)正確に伝える~正確表現力
(6)少ない文章量で伝える~短文表現力
のことです。前回は(1)から(3)を説明しました。今回は(4)から(6)を説明します。
(4)理解しやすくする~平易表現力
・「難しい用語,専門的な用語,自分やチームの人」しか分からない言葉は,言い換えて表現する
・ただし,文章に前修飾すると分かりづらいので,注やカッコで脚注にする
説得力のあるよい文章を書くためには,その文章で何を言いたいのかが相手に確実に理解してもらえるようにしなければなりません。このような文章に必要なのは,「できるだけ平易に表現する」ことです。
そのためには,専門用語や難しい用語,自分やチームしか分からない用語をできるだけ避ける必要があります。これらの用語を使って文章を書くと,その文章は分かりにくくなり,説得力も低くなります。これでは相手に理解してもらうことができません。
●前修飾による読みにくさを解消する
分かりやすい言葉を使っているにもかかわらず,文章が分かりにくくなるケースがあります。以下の文をご覧ください。
来年45歳になるかなり厳しい私の前の上司が新しい所属の部長になった。
なぜ分かりにくいのでしょうか。「来年45歳になるかなり厳しい」という前修飾を使っているからです。
この例からも分かるように,名詞などの語句を前から修飾すると意味が分かりにくくなります。この文を以下のように修正すると,意味が通りやすくなります。
私の前の上司(※)が新しい所属の部長になった。
※来年45歳。指導はかなり厳しい。
このように「平易に表現する」ための要素を理解し,簡潔で意味の通りやすい文章を書くよう心がける必要があります。
(5)正確に伝える~正確表現力
・「自分が知っていること」を省略しない。あくまで相手の知識,理解をベースに書く
・主語,主体を明確に書く
・曖昧な表現,無意味な表現は避ける
分かりやすく書くためには,むやみに省略をしないことが大切です。省略とは,本来記載すべき内容を「書かない」ことを言います。
読み手と書き手では,持っている情報や知識の量は異なっているのが普通です。文章でむやみに省略してしまうと,読み手が理解できないものになってしまいます。省略は,書き手と読み手の両方が既知の内容だけにすべきです。
たとえば,以下の文章があったとします。
システム品質を確保するため,レビューを行っていただきたく,お願いいたします。
・要件定義承認レビューは,インスペクションで実施します。
・各工程の担当者レベルレビューは,ウォークスルーで実施します。
詳細は,別紙の通り。
以上,よろしくお願いいたします。
これを渡して読んでもらう相手は,システムを知らない営業部門の課長です。インスペクションとか,ウォークスルーとかの意味は分からないと考えるべきです。「営業部門の部長に,システム専門用語をそのまま使うはずがない」と思うかもしれませんが,若いエンジニアは,結構このようなことをしてしまいがちです。
●知識差のための説明が不足
先の例のように,保有する知識に差があると思われる相手に向けて文書を書く場合は,十分気をつけなくてはなりません。あなたが開発側担当者だとしたら,顧客の担当者や責任者に向けて書く場合が該当します。
人は本来,自分本位なものです。「自分が知っていることは相手も知っている」と,つい思い込んでしまう悪い癖があります。このため,他人に説明すべきことを省略するケースが多く,これが分かりにくい文章を書いてしまう理由となっています。
(6)少ない文章量で伝える~短文表現力
・無駄な文章をそぎ落とす
・図を使う
・短くするための言い換えを使う
説得力のあるよい文章は,短い時間で,一目で直感的に内容を理解できます。こうした文章を書くためには,無駄な文章をそぎ落とすことはもちろん,言い換えや記号化,図表などを使うことが必要です。
締まりのない長い文章をよく見かけます。こうした文章は理解しにくいだけでなく,論点もぼやけてしまいます。
では,短い文でどう表現すればいいのでしょうか。ポイントは以下の4つです。
(b)注で飛ばして本文から省く
(c)受身表現を能動態にしたり,体言止めで省く
(d)絵や表に置き換えて省く
次回は「10年後も通用する文章術」のまとめとして,具体的な文章の修正の進め方を説明します。
<お知らせ>筆者の「文章力の本」が2月20日に発刊されました。タイトルは,「エンジニアのための文章術再入門講座」です。本連載「10年後も通用する文章術」と連動していますので,よろしければ読んでみてください。
前々回と前回で,「駄目な文章を書かない」ための「6力」を説明しました。6力とは
(2)納得させる~論理的記述力
(3)一目で認知させる~構造化力
(4)理解しやすくする~平易表現力
(5)正確に伝える~正確表現力
(6)少ない文章量で伝える~短文表現力
のことです。
これで6力すべてを説明しました。今回は具体的に文章を直していきたいと思います。
6力「使用前」の文章(約350字)
最初に「6力使用前」の文章を掲載します。以下は,架空の企業A社のシステム開発プロジェクト向けに作成した文章です。この文章を「6力」を使って修正してみます。
開発部各課長殿
・開発は現在システムテスト・フェーズに入っており,テストは3900ケースを完了した状態で,バグ数は累計で54件であり,安定した水準です。
・ただし,今後のことを考えた場合に,もう少しテスト要員を増加しておく必要があると考えられ,増員を検討しています。
つきましては,部内関係各課の皆様に,テストサポートに関する説明をしたいと思いますので,日程調整したいので,このメールに添付しています日程調整表に皆様の都合のよい日程を記入の上,返信ください。明日中でお願いします。
・テスト説明を行い,皆様にテストのやり方,方法を理解していただいた上で,テストサポートができる場合は,手伝っていただける部下メンバーを選出いただきます。そのときは,また,ご連絡いたします。
チェックして修正する
では,この文章を順に見ていきましょう。最初に,以下のセンテンスがあります。
これは現状説明を補足的に書いているに過ぎず,今回の文章のメインテーマ(論点)にはなっていません。今回の論点は以下の部分です。
ただし,この文章は長い上に,メインの主張の前に「テストサポートに関する説明をしたいと思いますので,日程調整したいので,」という長い修飾語が入っています。このため,構造の理解に時間がかかります。
そこで大事なことを先に書き,理由や補足を後から書く方式に変更します。
以下,説明会の日程を調整したいので返信願います。
-->テスト要員増員に関する内容
-->添付の日程調整表に記載の上,返信してください(明日中)
上記の文章では,「1. 依頼事項」が,論点のラベルの効果,「以下,説明会の日程を調整したいので返信願います。」がメインテーマ(論点の位置づけ),
-->添付の日程調整表に記載の上,返信してください(明日中)
が,会議の内容と日程調整に関する作業の詳細内容になっています。これなら,読み手は「自分は,なぜ,これをすべき」かを確実に理解できます。
さらに,タイトルを変更しましょう。タイトルでは,文章の意味をひとことで表現する必要があります。元の「テストに関する依頼の件」では,テストに関する何の依頼なのかがよく分かりません。
そこで
に変えました。これで内容が具体的になり,何をして欲しい文章なのかが分かります。
6力「使用後」の文章(約220字)
開発部各課長殿
1. 依頼事項
以下,説明会の日程を調整したいので返信願います。
-->テスト要員増員に関する内容
-->添付の日程調整表に記載の上,返信してください(明日中)
2. 背景
テストは安定消化中※だが,今後のテスト項目が増加
-->メンバーの確保が必要なため。
(※3900ケースが完了。バグ数:累計で54件)
3. 今後の予定
今回説明の「テスト手順」を確認の上,各部門から協力メンバーを選出いただく。(詳細は別途連絡)
「6力」を使用するメリット
6力を使用する前の文章と使用した後の文章を比べてください。そのメリットは以下の5点にまとめることができます。
(1)受け手が「何をすればよいのか」が明確で,一目で分かるようになっている
-->使用前は,全ての内容を読まないと何をすべきかが分からない
(2)依頼事項と,その理由の関係が分かりやすい
-->使用前は,依頼内容とその理由の関係が分かりにくい
(3)参考情報とメインテーマの記載順番が正しくなっている
-->使用前は,参考情報(テスト状況の数値)が前で,依頼事項が後ろにあるので,優先順位が分かりづらい
(4)タイトルが行動を表現するものになっている
-->使用前は,タイトルが曖昧であまり意味がない
(5)全体的に構造化され,文字数も減っており,きれいで見やすい
-->使用前は,すべての文章を読まないと全体構造が分からない上に文字量が多いので,全体の解読に時間がかかる。
このように文章を良くする技術を知っておき,それを使って文章を修正していくことで,文章はとても良いものになっていきます。
ここまでで説明した文章力は,課長になっても,部長や役員になっても,独立して働くときであっても必要な技術です。それこそが「10年後にも通用する文章術」なのです。
<お知らせ>筆者の「文章力の本」が2月20日に発刊されました。タイトルは,「エンジニアのための文章術再入門講座」です。本連載「10年後も通用する文章術」と連動していますので,よろしければ読んでみてください。