今年もいよいよ残り少なくなりました。この年末年始の休みを利用して家族旅行に行かれる方も多いのではないでしょうか。
ここいらでちょっと休憩。プロジェクトマネジメントなんて面倒臭いことは一旦忘れ、家族と一緒に旅行にでも出掛けましょうか。久しぶりのスキーを楽しんだ後は、あたたかい鍋を堪能。最後は温泉で日頃の疲れをゆっくり癒す。うーむ、最高です!
では、早速旅行の段取りを立てて…あれ…だ、「段取り」?もしかして、プロジェクトマネジメント?
何ということでしょう。せっかくの楽しい家族旅行でも「プロジェクトマネジメント」について考えなければならないなんて。
しかし、家族旅行ほど日常生活の中でプロジェクトとしっくり呼べるイベントはないかもしれません。始まりと終わりがあり、これまでと異なる「新たなチャレンジ要素」を持った活動、そのものではないですか。せっかくですから、これを機会にプロジェクトマネジメントをもっと身近に捉えて考えてみましょう。
あなたは「しっかり計画派」?それとも「気の向くまま派」?
旅の話題になると良く出てくるのが、「旅行前にしっかり計画を立てるべきか」、それとも「気の向くままに旅すべきか」という議論です。
別にどちらが正解という訳ではなく、「旅に何を求めるか」という目的に応じてどちらかスタイルを選べばよいのですが、家族旅行に限って言えば断然「事前にしっかり計画を立てておく」べきでしょう。そもそも家族それぞれの「気の向くまま」が合致することはまれですし、限られた時間と予算の中で家族全員の満足感を得るには、効率的で無駄のない旅行を行う必要があります。十分な段取り無しに成功は考えられません。
仕事上のプロジェクトも同様に、納期や予算が決まっており、その中でステークホルダー(利害関係者)全員の満足度を確保しなければなりませんね。家族旅行というイベントは日常にありながら、仕事上のプロジェクトに近い条件を持っています。
9本の横糸で段取りを考えてみる
9本のPMの横糸というものを以前紹介しました。家族旅行でもこの視点を使って段取りを考えてみましょう。
【スコープの視点】
旅行で「どこで何をしたいか」家族と話し合って決めましょう。「山頂から初日の出を見る」「うまい地酒を飲む」「露天風呂に入る」など。後で時間やコスト面と比較しながらスコープを調整できるよう、優先順位が付けられていると便利です。
旅行で「どこで何をしたいか」家族と話し合って決めましょう。「山頂から初日の出を見る」「うまい地酒を飲む」「露天風呂に入る」など。後で時間やコスト面と比較しながらスコープを調整できるよう、優先順位が付けられていると便利です。
【タイムの視点】
ルートを決めて所要時間を見積もりながら、工程表を引きましょう。この際、ある程度の余裕時間(バッファー)を持たしておくことが重要です。
ルートを決めて所要時間を見積もりながら、工程表を引きましょう。この際、ある程度の余裕時間(バッファー)を持たしておくことが重要です。
【コストの視点】
必要なコストを試算して予算内に収まるか確認します。時間と同様、ある程度の余裕を考えておきます。
必要なコストを試算して予算内に収まるか確認します。時間と同様、ある程度の余裕を考えておきます。
【品質の視点】
旅館やレストランなどの評判も確認しておきましょう。ガイドブックだけではなく、今はインターネットの情報も参考にできるので便利ですね。
旅館やレストランなどの評判も確認しておきましょう。ガイドブックだけではなく、今はインターネットの情報も参考にできるので便利ですね。
【統合の視点】
上記までが、いわゆる「QCDS」の視点ですが、相当時間とお金に余裕がある人でもない限りは、それぞれの要素間のバランスをあれこれ調整しなければなりません。「お!酒蔵巡りができるみたいだぞ!蕎麦屋でのランチは諦めて行ってみようか?」「いや、蕎麦は絶対譲れないわ」など、PMとしての調整能力が問われることになります。
上記までが、いわゆる「QCDS」の視点ですが、相当時間とお金に余裕がある人でもない限りは、それぞれの要素間のバランスをあれこれ調整しなければなりません。「お!酒蔵巡りができるみたいだぞ!蕎麦屋でのランチは諦めて行ってみようか?」「いや、蕎麦は絶対譲れないわ」など、PMとしての調整能力が問われることになります。
【人的資源・コミュニケーション】
体制や連絡手段など決めておきます。特に途中で2班に分かれるような場合重要ですが、ここでも「やだ、僕もママと一緒がいいー!」などのケースに対する調整が必要かもしれません。
体制や連絡手段など決めておきます。特に途中で2班に分かれるような場合重要ですが、ここでも「やだ、僕もママと一緒がいいー!」などのケースに対する調整が必要かもしれません。
【リスク】
さて、ここがいよいよPMとしての腕の見せ所です。家族旅行はどれだけ事前にリスクへの備えができているかで成否が決まると言っても過言ではありません。
・雨天のリスク→天気予報のチェック、雨天時の代替プランの準備
・渋滞のリスク→混雑予測情報入手と移動手段の変更検討、余裕時間の追加、代替ルートの準備
・予想以上に寒いリスク→セーターや上着の用意
・レストランの混雑リスク→予約、混雑時間を外して入店、付近の別のレストランを探しておく
など、挙げればキリがありませんが、事前に対策を打っておく、また、いざという時にすぐに対応できるよう準備しておけばステークホルダー、つまり家族の満足度低下を最小限に抑えることができます。
さて、ここがいよいよPMとしての腕の見せ所です。家族旅行はどれだけ事前にリスクへの備えができているかで成否が決まると言っても過言ではありません。
・雨天のリスク→天気予報のチェック、雨天時の代替プランの準備
・渋滞のリスク→混雑予測情報入手と移動手段の変更検討、余裕時間の追加、代替ルートの準備
・予想以上に寒いリスク→セーターや上着の用意
・レストランの混雑リスク→予約、混雑時間を外して入店、付近の別のレストランを探しておく
など、挙げればキリがありませんが、事前に対策を打っておく、また、いざという時にすぐに対応できるよう準備しておけばステークホルダー、つまり家族の満足度低下を最小限に抑えることができます。
【調達】
旅館や施設の予約、電車や航空チケットなどの手配をしましょう。割引制度や調達先による価格の違いなど調べておくとコストを抑えられる可能性があります。
旅館や施設の予約、電車や航空チケットなどの手配をしましょう。割引制度や調達先による価格の違いなど調べておくとコストを抑えられる可能性があります。
そして、確認・振り返り
十分に計画を立ててから出発しても、予定通りに旅行が進むとは限りません。所要時間やコストが見積もり以上に掛かっていないか確認しながら、ある程度はバッファーで吸収しつつ、また、状況によっては重要ではない場所の滞在時間を短縮するなどの計画調整・見直しを検討しなければなりません。家族旅行とは言えなかなか気が抜けないものです。
個人や友達同士の気ままな旅なら状況に応じて次の段取りをその場でじっくり決めることができますが、家族旅行では明確な目的の達成を期待されている以上、手遅れになってから「時間がなくなったから諦める」とは簡単にいきません。予定と実績に差異が出る(ちょっと時間が遅れ気味だな)、またはその兆候が現れた(ここは思ったより見て回るのに時間が掛かりそうだな)段階で早めに軌道修正の対策を講じなければなりませんよね。
そしてようやく旅行も終盤、帰りの道すがら自然とプロジェクトの振り返りが行われることになります。「今回の旅行すごく良かったね」「少し予算オーバーしちゃったね。でも楽しかった」…。忙しかったものの、あなたは家族の満足した顔を見てようやくこの旅行が自分自身でも満足できることになるでしょう。これこそPMとしての至福の時ですね。
身近な題材に置き換えると本質をつかみやすい
家族旅行というイベントで考えてみると、プロジェクトマネジメントがとても身近でシンプルに捉えられることが分かります。
これからこの連載でも徐々に専門的な概念や用語が増えてきますが、このような身近な題材に当てはめてイメージすることで本質的な部分がつかみやすくなります。
仕事上のプロジェクトではステークホルダーが増えるケースが多く、人的資源、コミュニケーション、調達などの視点がもっと複雑になりがちですが、例えばあなたが学校の先生で修学旅行のプロジェクトマネジャーとなったなど、少し応用して考えると想像しやすくなるはずです。ぜひお試しを!
それでは、次回からいよいよプロジェクトマネジメントの具体的手順の説明に入ります。お楽しみに!
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