▼字にも口にもしたくない強姦(ごうかん)の語には、「乱暴」「レイプ」では伝えきれないおぞましさが宿る。無論、被害者の痛み、悔しさは言葉で尽くせるはずもない
▼女性2人を襲い、強盗強姦などの罪に問われた男(22)に、青森地裁で求刑通りの懲役15年が言い渡された。性犯罪では初の裁判員裁判。弁護側は懲役5年が適当としていた。男性の裁判員は「被害者の気持ちを理解するのは、非常に大変な心の作業でした」と語る
▼「女性として一番ひどいことをされた」という叫びは通じたが、負担は大きい。被害の詳細が法廷で再現され、6人中5人を男性が占めた裁判員には、被害者の声ばかりか姿もさらされた。もっと訴えやすくする工夫が要る
▼つらい体験を著書『性犯罪被害にあうということ』で明かした小林美佳さんは記した。「それまでの二十四年間を過ごしてきた私が、消えた……すべてが洗い流されたように感じた」。泣いては吐きの日々。雑踏では異臭を放つ動物のように見られている気がしたという
▼法曹界が長らく男性社会だったこともあろう。これほどむごい強姦罪の法定刑がなぜか強盗より軽い。殺人に等しい冒頭の事件も、判決は懲役7年までだった。強盗がついたとはいえ、厳罰の側に張りついた市民感覚を支持する。次からも、最たる女性差別を痛撃してほしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿