▼慶喜はなかなかの人物だったというが、宮沢さんも懐が深かったのだろう。非自民政権が発足した直後に細川首相に会って、親身に助言をした。「バランス感覚を持つ賢人から機会をいただいて本当にうれしかった」と細川氏は当時を振り返っている
▼宮沢さんらしいグッドルーザー(良き敗者)ぶりといえる。ひるがえって麻生さんはどうだろう。選挙後初めての「ぶらさがり取材」の様子をテレビが伝えていた。露骨な苛立(いらだ)ちを記者団にぶつける日本の首相は、悲しいが「良き敗者」の像からずいぶん遠い
▼それは、メディアを通して、国民に悪態をつくことでもある。いささかひどいと思ったのか、「ノーカットで流します」と報じる局もあった。党の負った深い傷に、総裁自ら塩をすり込んでいるようなものだ
▼鏡に映った姿が不満だからと、鏡を責めても仕方がない。自民を惨敗させた民意は、党の現状を映した鏡である。おのが姿を正していくしか再生への道はないのに、外に向けて腹を立てても始まらない
▼徳川慶喜に話を戻せば、明治政府成立の最大の功績者という見方がある。その意味で麻生さんの名も歴史に残る。とはいえまだ現役総理で、引き継ぎの任もある。「自民党最後の首相」と史書に刻まれないために、なすべきこと、なすべきでないことは、ご本人が一番承知のはずである。
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